大阪高等裁判所 昭和24年(を)2271号 判決
被告人
松川博門
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中百二十日を本刑に算入する。
理由
原審公判調書をみると「弁護人は被告人の利益のため本件犯行の動機、科刑の点などについて詳述し、裁判を求めると弁論した」との記載が不動文字をもつてなされていて、いかなる裁判を求めたかを明かにしていない。しかし、刑事訴訟規則第四十四條によれば公判調書には被告人若しくは弁護人が最終に陳述したこと又は被告人若しくは弁護人に最終に陳述する機会を與えたことを記載しなければならないが、弁護人がいかなる裁判を求めたかを記載せよとの規定はないから右の原審公判調書の記載はそれ自体違法というを得ない。そして犯行の動機如何によつて、その犯行が無罪となるべき主張とはならないし、また判決中に無罪または刑の減免の主張について判断しなければならない場合は刑事訴訟法第三百三十五條第二項によつて法律上犯罪の成立を妨げる理由または刑の減免の理由になる具体的事実が主張せられたときにはじめて生ずるのであつて、所論もかかる事実の主張があつたというのでないから原判決に弁論に対する判断を示さなかつたのは当然であつてて所論の違法はない。論旨は採用し得ない。